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旅好き映画好き必読。片桐はいりのエッセイ『私のマトカ』『もぎりよ今夜も有難う』『グアテマラの弟』を一気に読破。

公開日: : 最終更新日:2015/07/20 2014, 映画, 本棚

 

以前より気になっていた女優・片桐はいりさんのエッセイ「わたしのマトカ 」を購入してみた。失礼ながら、女優さんの旅エッセイなんだろうと軽い気持ちで読み進めたら、これが大きな間違いだった。

そう来たか!と目を白黒させてしまうユーモアに満ちた独特の比喩表現。読み進めながらあの四角い顔のはいりさんの珍道中が頭のなかにぽわんと浮かんできて、まるで映画のよう。読み終わった後、彼女のエッセイ他2冊もポチリ。旅好き、映画好きにはたまらない3冊。

特に「もぎりよ今夜も有難う」はこれだけ映画(館)が大好きな人がいるのね!と、きっとこれから何度も読み返すんだろうなぁ。今年買ってよかった本ナンバーワン。

私のマトカ

映画「かもめ食堂」撮影時のフィンランド滞在記をまとめた本書。フィンランドのみならず、これまで彼女が経験した海外旅のエピソードも織り交ぜられながら話は進む。

特に好きなのが厚揚げを求めて入った中華食材店についての章。中華食材店のショーウィンドウにて欧米では激レア野菜のニラの仕分けに釘付けな自身の様子を語るのにヘップバーンのティファニーで朝食をを引き合いに出すとは…!そして歓喜のあまり手にしたニラを聖火ランナーのように掲げて走ったと書くのだから思わず想像して吹き出した。

海外滞在時に日本食が恋しくなった時、言葉が通じなかった時、電車・バスに乗る時のハラハラ・ドキドキというのは海外旅あるあるだけれど、さすがはベテラン女優さんとでも言うべきか、ひとつひとつのエピソードの魅せ方をよく心得ていてぐいぐい引きこまれた。

フィンランド滞在時だけにとどまらず、帰国後しばらく続く余韻についてもページが割かれている。旅は終わっても一度どっぷり浸った旅気分はそう簡単には抜けない。そうそう、旅ってこういうものよねぇ。

フィンランド人の様子が愛にあふれた独特のユーモアで語られていて、読み終わった跡、無性にフィンランドに行きたくなるのは言うまでもないけれど、アキ・カウリスマキ映画も無性に観たくなる一冊。

「もぎりよ今夜も有難う」

学生時代から足掛け7年も「もぎり」(チケットをもぎる人)をしていた片桐はいりさん。そのことには「わたしのマトカ」でもちらりと触れられていたが、そのはいりさんの「映画館」愛がとくと語られているこの一冊。

決して押し付けがましくなく、嫌らしくなく、でも彼女がどれだけ映画と映画館を愛しているかが切々と伝わってきて、読んでいると今すぐ映画館に行きたい!という衝動に駆られる。

他の人が売店やチケットブースに昇進していく中で、7年間も「もぎり」一筋で勤めあげたはいりさん。前半は銀座文化劇場(現シネスイッチ銀座)時代のエピソードを中心に語られている。

彼女が働いていたのは私が生まれるか生まれないか、といった頃の時代だけれど、私が物心ついてからもまだしばらくギリギリ入替え制は主流ではなくて、途中入場して次の回まで観たり、字幕と吹替えを交互に観たり、なんてことができた時代だった。

平成ヒトケタ時分。立ち見でいっちょまえに大人と一緒に後ろに陣取って、回が終わるとそれ!と一目散に席確保へと走ったのも今は昔。定員入替え制ってなんか寂しいのよねぇと思っていたので席取り合戦のエピソードには激しくうなずき、寅さんを観て育った私としては渥美清さんのエピソードには胸を高鳴らせながら読み進めた。

後半は彼女が長年勤めた銀座文化を離れ、日本各地にある映画館にまつわるエピソードが語られている。「旅先で、神社や古くからある映画館の場所などをおさえておくと、その待ちの盛り場のあらましが手に取るようにわかる」のだそうだ。

かつて日本には各駅にひとつは映画館がある時代があった。古くからある映画館をめぐるというのは、遺跡を見て往年の情景を思い浮かべる行為に少しだけ似ている。でも願わくば、もう少しだけ、「生きた遺跡」として残り続けていて欲しい。

女優であり、旅好き、映画館好きの筆者ならではのエピソードが満載で、手元に置いて何度も読み返したい。今年買ってよかった本ナンバーワン。

グアテマラの弟

わたしのマトカ」でもちらりと触れられている、グアテマラ在住の弟さん。多忙なはいりさんが弟を訪ねて海を越えて何千里と旅をすることになったいきさつから帰国した後のお土産話(というかお土産の話)まで。

本書は旅の話であると同時に、家族の話でもある。海外で暮らすということ。家族の面倒を見るということ。家族になるということ。はいりさんの家族だけではなく、グアテマラの家族の形も垣間見えてなかなかに興味深い。

目を閉じればグアテマラの景色と人々が浮かんできそうな、イキイキとした筆致。たった二週間かそこらの旅路をここまでふくらませて書けるとは恐れ入る。現在この記事で紹介した3冊しか出ていないのが非常に残念。次の作品が楽しみです。

そんな片桐はいりさん出演作おすすめ

エッセイで語られる彼女の一風変わった熱血キャラクターとエキセントリックなエピソードの数々はそのまま映画やドラマに出来そうなくらい。この人でなければ「かもめ食堂」のみどりさんやドラマ「すいか」の刑事さんはなかっただろうなぁと思う。ついでなので、私のお気に入りの上記二作もちょこっとだけ紹介。

映画「かもめ食堂」

かもめ食堂は私が説明するまでもないと思うけれど、小林聡美さん扮するさちえさんがフィンランドにて日本食の食堂を開いて奮闘するお話。片桐さんが演じるのはたまたま書店で出会ったのを機にそこで働き始める「みどりさん」。ちょっと熱血で、ちょっと変わっていて、でもまっすぐなみどりさんの配役は片桐さんにぴったり。

ドラマ「すいか」

かもめ食堂」と同じく小林聡美さん主演のドラマ。三軒茶屋にある下宿屋さんで繰り広げられるストーリー。(シェアハウス、ではなく下宿なのがミソ。)三十路半ば、平凡な銀行員の主人公がとある事件をきかっけに家を出て、下宿を始める。その事件というのが主人公の職場での唯一の心の拠り所であった同期が起こした3億円横領事件。

片桐さんが演じるのは、その同僚を追う一風変わった刑事さん。共演は「かもめ食堂」でも共演のもたいまさこさんをはじめ、浅丘ルリ子、白石加代子、高橋克実、ともさかりえ、市川実日子と共演者も個性豊かで豪華な顔ぶれ。

出演者の個性豊かなファッションや、毎度毎度、食卓に上がるご飯も美味しそうで注目。放送から10年が経過した今も一部のファンから絶大な支持を得ている本作。たまに無性に観たくなるドラマ。

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